20100815


(東京の郊外にある、緑豊かな、とある霊園)


奈津恵:……早いものね。大恵(ひろえ)姉さんが亡くなってから、
    もう6年になるなんて……。


沙織:生きてりゃ今年41だっけ?若かったよねぇ…。
   まだなんか、ちょっと信じられないよね。
大恵姉ちゃんとは従姉妹だけど、
   ウチらと姉妹みたいな感じですごく身近だったしなぁ。


奈津恵:そういえば、青木君は……

沙織:姉貴、会社のクセがついちゃってるな!「青木君」とかw
   今までどおり大空でいいじゃん。


奈津恵:う、うるさいわね。立場上、部下を呼び捨てとかできないんだから仕方ないでしょ!
    ……そういえば、大空は怪我が治ってから初めてのお墓参りかしら?

大空:…………

沙織:ん?大空どした?

大空:…………あ、ああごめん沙織おば

沙織:おばちゃんって呼ぶなよ?

大空:(あわてて言葉を飲み込む)……沙織姉ちゃん。
   いや……もう6年も経ったのに、やっぱここ来ると、しんみりしちゃって……

奈津恵:それは、当たり前だし仕方ないわよ。貴方の母親なんだから。
    さ、着いたわよ。怪我が治って、無事就職できたこと、お母さんに報告しなさい。




沙織:そういや、おじさん(大空の父)は今日はどうしたん?

大空:父ちゃんなら……何か、母ちゃんと二人で話したいことがあったみたいで……
   今朝早く一人でここに来てたみたい。そのあと職場に寄るって言ってた。

奈津恵:通洋(みちひろ)さんね……あの人の、大恵姉さんへの愛情は異常……
    って言っちゃ悪いけど
並々ならぬものがあったからね……
    夫婦だけで話したい事も色々あったんでしょう、きっと。


大空:そうだね………(線香をあげた後、墓石の脇にある墓誌に目が行く)

沙織:ん?

大空:(墓誌にそっと触れながら)
   ……俺、一歩間違えばここに名前入ってたんだよなぁ…って思って……。

沙織:ハハハ、そうだよなぁ!…って笑いごっちゃないけどさ!
   大恵姉ちゃんも事故で…だったけど、あんたの事故も、相当酷かったからなぁ。

大空:……「普通」に助かったんなら、良かったんだけど……
   ……俺、助かったというよりは機械の身体に生まれ変わったって
   言うようなもんでしょ?
きっと本当は死ぬ運命だったんだろうけど、
   それに逆らってこんな風に生き残って、良かったのかなぁって…


奈津恵:(苦笑いしながら)まぁ………………
    久我さんのいい実験というか研究材料にされてしまった感は否めないけど……
    でも、なんだっていいじゃない、生きてるなら。
    大恵姉さんだって、たった一人の息子にそんな早死にして欲しくなかったはずよ。

大空:うん……

奈津恵:それともあのまま、死んだ方が良かったの?

大空:そ、そんなことないよ…!

奈津恵:なら素直に、今生きてることに感謝なさい。
    何であろうと、生きてるのは素晴らしいことよ。

    通洋さん…お父さんはもちろん、私や沙織だって、
    どんな形であれ貴方が生きててくれて、嬉しかったのよ。

沙織:そーそー。まぁ複雑なのはわかるけどさ、
   あんたの命はあんただけのためのものじゃないんだよ!


大空:……奈津恵おばさん……沙織姉ちゃん……!!
   ありがとう……俺……俺、ずっと悩んでたけど……
   やっと、母ちゃんに言えるよ……!!


   (墓石に向かい合って立つ)

大空:……母ちゃん……俺、事故で死に掛けたけどなんとか今生きてるよ……!
   久我さんに、父ちゃんの同意のもと、機械の身体に改造されて、
   怪力になったり計算に異常に強くなったり、
   ロケットパンチが出せるようになったり、
   目からビームが出るようになったり、
   空が飛べるようになったり、
   火付けられても水に沈められても平気だったり
   女湯も覗けちゃう透視カメラ内臓されちゃったり
   なんの関係があるのか分からないけど地デジ対応済みだし
   こないだ寝てる間にさらに改造されてミサイル搭載されたり
   その他に(長いので中略)されたりもしちゃったけど、
   俺強く生きていくよ!!!!



奈津恵沙織:∑( ̄□ ̄;)………!!!!!




(その後…お盆休み明けに、奈津恵により久我がボロ雑巾のように
絞り上げられたのは言うまでもない。)